● ヒルトングループが全ノウハウを傾注した「コンラッド東京」 |
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2005年7月1日、汐留に「コンラッド東京」が開業します。
「コンラッド」と冠するホテルは、ヒルトンホテルグループの中でもフラッグシップ的存在であり、グループ内の五つ星ホテルブランドです。その初の日本進出であることに加えて、六本木のハイアット、リッツカールトン、日本橋のマンダリン、日比谷のペニンシュラと、世界の有名五つ星ホテルがほぼ同時に東京に登場するということもあり、「コンラッド東京」はヒルトングループの全ノウハウを傾注したプロジェクトとなっています。
私も過去長年にわたりアジア各地で、ヒルトン、ハイアット、シェラトン等の国際的ホテルの厨房設計に数多く携わってきましたが、今回はヒルトングループの力の入れ方がひしひしと感じられるプロジェクトでありました。 |
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● それぞれ創意を凝らした和食、中華、洋食のレストラン |
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このホテルのコンセプトは、日本の和を取り入れながら、コンテンポラリーでしかも最上級ホテルであるというもの。レストランの雰囲気はもちろん、料理も最高レベルが求められ、世界各地から選りすぐりのシェフが集められました。総料理長はシンガポールのラッフルズホテルからフレディ・シュミット氏が招請され、28階には英国の七つ星シェフのゴードン・ラムゼーのレストランが設けられています。
ホテルは最近主流となってきた複合ビルの28階から上層階に位置し、浜離宮と東京湾の絶景が堪能できます。別棟の1・2階が宴会場とチャペル及びウエディングサロンの構成。飲食施設は全て28階のロビー階に集中しており、和食、中華、洋食の3つの独立したレストランとバーを設けたロビーラウンジがあります。
和食は白壁の日本の蔵をイメージしたインテリアで、ディシュアップテーブルから厨房が覗け、蔵の窓から料理人が垣間見える雰囲気。中華はレストランに入る20メートルの回廊の正面の窓を通して点心の蒸気が見え、火の芸術といわれる厨房を見ながらダイニングへと導かれます。洋食のゴードン・ラムゼーのレストランは、シェフズテーブルがオープンキッチンの正面に位置し、シェフ達の所作が手元まで見えるように演出してあります。レストランを覗くだけでも十分楽しめるようになっているわけですが、もちろん料理を食べれば感無量、100%保証です。 |
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● 作業の効率性と徹底した衛生管理を追求した厨房施設 |
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地下1階の厨房はベイカリー、ペストリーが2室1区画、野菜洗浄、フィシャー、ブッチャー、ホットプロダクション、ガデマンジェーが5室1区画で形成され、その他調達の倉庫および酒庫を持つ典型的なメインキッチンとしています。メインキッチンからは1・2階のバンケット厨房へ専用の大型エレベーターによりアクセスが確保されています。ホテル全体の下処理、宴会料理の準備は全てこのメインキッチンで行い、ガストロノームサイズの容器、カートを使って各レストランおよび宴会場へと移動します。コンビスチィーマーとブラストチラーによるクックチルシステムを使い、作業の平準を可能としました。
全ての食材は荷受場の検品室を兼ねたアンパッキングルームでホテルの専用容器に移し替えられて、外部からの汚染されたダンボールや梱包材はホテル内に持ち込まれないシステムとなっています。
宴会場厨房は国内のホテルと比較するとパントリー程度の広さにし、メインキッチンの補完的作業を行う程度の機器を配置。食器洗浄は1箇所に集約し、作業の効率化を図り、労働力の削減に留意しています。
28階のゴードン・ラムゼーのサポート厨房はルームサービス厨房を兼ね、食器洗浄、ポットパンの洗浄は洋食、ルームサービス、中華をすべて行う集中洗浄セクションとして、ここでも労働力の集約化に努めています。 |
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● 適正かつ最小の厨房の条件とは? |
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このプロジェクトでは、厨房面積を従来の7割程度に抑えています。広い厨房はそれだけ多くの人員を必要とするので、厨房は適正にして最小が理想とされていますが、数多くの厨房を設計してきた私の経験によると、ちょっと狭すぎかなと感じる程度が結果的に適正だったというケースが多々あります。しかし冷蔵庫は、食材庫、製品庫、手元冷蔵庫を含めて十分確保することが、これらの適正最小の厨房をつくるための必須条件なのです。
カート等のモービル機器を多く使うために、床材は厨房用の長尺シートをホテルの全厨房に使用しています。これは目地がないため清掃が非常に簡単であり、モービル機器もスムーズに移動でき、しかもクッションが働く人の疲労を和らげる効果もあり、最近海外のホテルに多く使われているものです。
この「コンラッド東京」のプロジェクトは、私の数多く手掛けたプロジェクトの中でも印象に残るものの一つです。皆様もぜひ一度ホテルにおいでいただき、本物の五つ星ホテルを堪能してください。 |