(注)デザインの重要性
マクドナルドやダンキンドーナツ、オーボンパンはスターバックスの都市型出店により大きなダメージを受けたが、それは飲料などの品質だけでなく、スターバックスが消費者に訴えるサードプレイスという居心地の良い環境作りであるということに気が付いた。そのためにマクドナルド社は2年前の創業50周年の際に、シカゴ郊外のオークブルック・ショッピングモールと旧本社の間の地区本部あった場所に、新しいデザインの2階建てのしゃれた店舗を作り上げた。通常の店舗とマックカフェを組み合わせたものだ。この店舗は急逝した前社長のチャーリー・ベル氏の記念店でもある。同じく2階建ての店舗には40インチ近い巨大な薄型ディスプレーを24台備え画像を流している。また、保守的な同社には珍しく、各客席に電源とインターネットの接続を備え、客がいろいろな情報を入手できるようにしている。客席は従来のタイル張りではなくカーペットを敷き、プラスチックの冷たいいすから革張りの柔らかいソファーに変更した。
店舗外観も従来の屋根裏部屋型の古臭いデザインからかまぼこ型の明るい色彩の外観に切り替え、看板も赤いプラスチックからお洒落なカフェ風の落ち着いたデザインにした。マクドナルドを脅かしたファスト・カジュアルの店舗は調理場を全て見えるようにして、調理工程を顧客に見せて楽しませたり安心感をかもし出している。そこでマクドナルド社はなるべく調理工程を顧客が見えるように改善をしている。
スターバックスにビジネスを奪われたオーボンパンは、そのほとんどの店舗を売却し(現在は給食大手のコンパスが所有)、パネラブレッドと言う高級サンドイッチ業態を開発した。オーボンパンは大型の工場で製造した冷凍パンを使用していたが、冷凍パンは冷凍耐性のある特殊なイースト菌を大量に使うために味が悪いという問題を抱えるだけでなく、工場への多額の投資が必要であった。そこで、パネラブレッドの展開にあたっては味を最優先にして天然酵母を使用し、複数の店舗ごとに小型のカミサリー(下拵えと配送機能)を設置し天然酵母を使用してこね上げたドウを冷蔵状態で店舗に配送し、夜間に店舗ごとに焼き上げるという品質第一の仕組みを構築した。
オーボンパン時代の店舗は店舗が狭く、ファスト・フードのようにタイルとプラスチックの椅子テーブルを使用していた。それがスターバックスの居心地よさに対する敗北の原因であるとして、パネラブレッドの標準店舗は150席のゆったりとした客席と、高級レストラン並みのデザイン性のある内装を備え付けた。現在では米国の外食業界では売上げの伸びが第一位である。 |