最適厨房研究会
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活動内容の報告 2007年度
 
概要と目次
総会
2007年度総会
外食研究部会
第1回外食研究部会
給食研究部会
第1回給食研究部会
第2回給食研究部会
第3回給食研究部会
セミナー・見学会
2007年度施設見学会
欧州厨房調査団報告
(第2回)
海外研修会報告
米国厨房視察団報告
(第1回)
外食研究部会施設見学会(ザ・ペニンシュラホテル東京)
給食研究部会施設見学会(涼風園)
最適厨房研究会 内容報告会
最適厨房研究会「欧州厨房調査団」報告【第2回】
 

(3)営業方針の改革転換
Electrolux Food Serviceが他のグループと比較して優れているのは、高級顧客から普及品にいたる広い層に対応できる商品群を持っていることだそうである。特にMolteniとTherma ブランドの確保がこのグループの特異性と優位性を保っているが、これらの高級志向の市場が成熟するまでの期間の過程において、利益確保のために、営業方針の大きな転換による徹底した合理化は不可欠なものであったようだ。

全ての厨房機器製造会社がそうであったように、以前は販売の基礎は単品の販売と設備施工によって構成されていた。しかし、厨房コンサルタントとの競合を廃止してコンサルタントの育成と共同作業に利点を見出して営業の転換を行い、それまで自社で抱えていた設計部門を、一部を残して独立、あるいは廃止させることによりコスト削減を図った。これを機会に他社も同じ方針を採用したことが、厨房機器メーカーをも蘇生させることとなったようである。

欧州の各メーカーの現在の営業は、代理店営業とコンサルタントに対する営業が中心となっている。設計部門には数名がいてコンサルタントや代理店に対しての設計提案を行うのみであり、一般的には厨房コンサルタントとの競合は行わないそうである。設備施工は代理店が行うようになっているため、代理店とメーカーとの競合や摩擦がないことが長続きの要因となっているようだ。厨房コンサルタントの社会的な地位が高く、いわゆるゼネコンの配下となって仕事をするということはない。そのため、質の高い内容は確保され、価格の極端な値引きもないので、機器メーカーの地位も評価されているということを強調していた。

 

(4)欧州厨房機器メーカーに課せられているテーマと、進むグループ化
Di Bari副社長によると、エレクトロラクス社は7%の研究開発費を投入しているとのことであった。これについては、メンバー一同驚きの様子であったので、その背景についてDi Bari副社長の説明を以下に記述する。

「欧州における厨房機器製造会社には、製造される機器が作業員に最適な作業環境と人間工学に基づく機器であることが明確なテーマとして課せられている。まず、作業環境保持を目的とした室温低下維持のための放熱の減少、稼動音の減少、省エネルギーと自然環境への配慮が明確であること、安全配慮、HACCPなどへの対応として清掃性が良いこと、などを基本的に明確にすることが最終ユーザーより求められている。

これらの市場の要求に対しては、開発費への投資が続けられる企業であること、技術開発のための人材が確保できることが不可欠となり、このテーマに対応しきれない企業は淘汰されるのである。従って、資本力のない中小の製造メーカーが、大手のグループ(Enodis,Aliグループ等)に自社の技術力を売り込み、生き残りをはかっているのが現状である。

しかし、グループ参加はしてもブランド名を生かしていることが多い。多くの場合は資本参加であるが、エレクトロラクス社は100%の持ち株であることが他のグループと根本的に違う。このため、開発のスピードが速いことと意思決定が明確でスピーディである利点が出ている。

HACCPや環境問題に対しての的確な提案機器を市場に提供することにより、欧州の製造メーカーは欧州のみならず世界市場に確固たる地位を築いたといっても過言ではない。従って、市場開発と同様に、技術開発にはこの程度の開発投資額は必要不可欠である、との方針が明確に企業方針として課せられているのである。その結果として、米国を含む世界市場において欧州メーカーの進出が顕著であることが、これを証明している。」

 

(5)キッチンシアターとショールーム等の訪問
展示館は、ショールーム・キッチンシアター(3ケ所)・従業員食堂の3部門に分かれている。キッチンシアターとショールームの年間訪問者数は6,000人を超えるといわれ、製品トレーニングとクッキングトレーニングが代理店とエンドユーザーに対して行われているそうである。キッチンシアターの使用は予約制となっており、クックチルシステムのトレーニングは数日の宿泊によるトレーニングが行われるとのことであった。

施設内最大規模の100席を越える席数をもつ階段式キッチンシアターは、最高級ブランドで知られているElectrolux Therma lineの機器で構成されていた。我々はMr.Kesraouiの案内により展示品と熱機器に関しての省エネルギーとスペースの使い方についての説明を受けた。

左)キッチンシアター全景。  右)キッチンシアターの機器。右からガスバーナー、 電気クロムプレート、1つあけて電磁調理器。
 
Mr.Kesraouiによるキッチンシアターでのデモ内容
  • ThermaLineのガスレンジにはエコフレームと名づけられたバーナーがあり、デモンストレーションを受けた。口火とメインバーナーの横にピンが出ており、鍋が乗ることによりピンが下に押されて主管のパイプが開放され、口火のバーナーによりメインバーナーに点火されるが、鍋を横にずらすとピンが上がり主管を遮断しメインバーナーが消える。単純なメカであるが、ガスの消費は30%セーブできるとのことであった。開発製品されて約20年近く経ているとのことであるが、我々にとっては今後の開発にヒントが与えられた。
  • 同じゾーンには二口バーナーのガスレンジ、クロームコーティングされた電気プレート、二口電磁調理器が配置されている。一定量の水をフライパンに入れて加熱スピードを測ったところ、電気式クロームプレートが一番早く沸騰したのは意外であった。
  • 従来の電気式の加熱プレートは、ガスの加熱プレートに比較して輻射熱が強く、作業者には極めて過酷な作業環境である。さらに加熱後の温度調節や表面温度の低下に時間がかかり、作業環境の確保には大きな宿題が提示されていた。その後クロームプレートの製造技術が進歩し、大幅に輻射熱が低下したことで積極的に採用されることになった。
  • 電磁調理器の出現により、ある使用状況においてはガス機器に対して脅威となっているが、全ての国で受け入れられているわけではない。価格的な面もさることながら、人間に与える影響の検証が証明されないとのことで、北欧では積極的な採用には繋がっていない、との説明があった。
  • 電気式、ガス式の加熱プレートはガスコンロや電磁調理器と同じスペースを使用しながらも、プレートの上に乗せられる鍋の数は平面を有効に利用できるので、狭いスペースでは、もっと積極的な採用が考慮されるべきであると力説していた。
  • ティルティング圧力パンは、汎用機としての機能と圧力調理の利点、省エネルギー、狭いスペースほど、いくつもの機能を持つ機器の活用方法についてのプレゼンテーションがあった。
左)ティルティング圧力パン。 右)エコフレームバーナー。バーナー上部のピンが 鍋底によって押されるとメインバーナーに点火する。
 
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