住所:28 rue de l'abbé Grégoire - 75006 Paris
創設:1932年
運営主体:パリ市商工会議所
HP:http://www.egf.ccip.fr/
パリの観光資源を継承するフェランディ校
ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ国立高等学校の厨房を見学の後、東京ガスが運営するフランス料理文化センターの提携先料理学校「フェランディ校」の見学をしました。
このフェランディ校を運営しているのはなんとパリ市の商工会議所で、80年以上の歴史を持っています。私の大学院で学生が観光振興の研究論文を書いておりますが、その調査でわかったのはフランスに来る外国人観光客は2005年には7600万人とフランスの人口を上回る数字で、世界で最も外国人観光客が多いのです。日本は昨年で800万人程度とフランスの1/10程度に過ぎません。 |
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観光客の誘致には、ユネスコの世界遺産、景観などの自然資源や、神社仏閣お城などの歴史的建造物、お洒落で現代的な町等が必要です。フランスのパリ市は歴史のある建造物や美術館が多く、シャンゼリゼ等の雰囲気のある街、そして三ツ星などのフランス料理店があります。私はそれらの観光資源が偶然出来たと思っていたのですが、フランス料理店を支える調理人の育成を商工会議所が担当していたとは驚きました。
その商工会議所が運営しているフェランディ校の見学と、月に数回行っている実習料理をディナーでいただくことになりました。 |
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最新の厨房機器を備えた実習教室
まず、教室を見学しました。料理法をプレゼンテーションする100名弱が座れる階段教室の調理システムは素晴らしく、感心しました。設置してある調理機器はスチームコンベクションオーブン、ガスレンジ、電子レンジ、サラマンダー、グリドル兼イーブンヒートトップレンジ、Frimaの圧力調理機器2台と最新のものでした。 |
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ガスレンジの台の部分には水が流れるようになっており、調理の汚れがつかないようになっています。Frima VarioCooking Centerという機械はフライヤー、グリドル、スチーマー、と多用途に使えるようになっています。中央に小型のフライヤーがあり、両サイドに小型のブレージング・パンが設置されています。ブレージング・パンは深めで、油を入れればフライヤーに、何も入れなければグリルになります。勿論、蒸したり煮たりすることも出来ます。調理温度と時間を設定することが出来るし、フライヤーでしたらオートリフトがついているので、揚げすぎの心配も要りません。
さて、この調理階段教室の後ろには、料理や素材の味見をするパネルテストの部屋があります。目隠しをしたテーブルが並んでおり、ここでチーズやワインの味見の勉強をしたり、商品開発の際のパネルテストで使います。味だけではなく、香りを出す機械も設置してフレーバーの勉強もできるようになっています。 |
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40年以上前の調理機器も現役で活躍
階段教室の後は、調理実習室を見学しました。素晴らしいのは実践的な調理実習をするために、すべてガス式の調理機器を使った実習室、電化厨房機器の実習室、電気とガスの両方の組み合わせの実習室があります。実際の店舗では色々な調理機器を組み合わせるので、3種類の実習室を作っているのです。
また、古い実習室も残っていて、40年以上前の調理機器も現役で使っています。数年前にオーバーホールしたのですが、新式の機械に変えるよりも3倍のコストがかかったそうです。しかし、使える機械は徹底的に大事に使うのがフランス式だそうで、お金がかかっても大事に使うのだといっていました。この古い物を大事に使うというフランス気質が、フランスの古い町並みや美術品を大事に保存している原動力なのでしょう。 |
その他、ベーカリーの調理室と調理人が調理場に置くベーカリー設備の実習室、クックチルの実習室、下拵え室があります。 |
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実践的な調理人を育てる独自のプログラム
訪問した日は月に数回おこなう実習日で、学生が調理とサービスを担当して、実際のお客様にフルコースの料理を提供します。勿論、お客様は料金を支払って食事をします。客席は70席ほどで、ワインやカクテルのサービスもあります。客席横の実習調理室では学生が真剣な表情で調理をしています。サービス担当者も学生です。料理の盛付も素晴らしいし、味もしっかりしていました。
3年間の学校時代には、授業での調理実習半年、半年のレストランでの実習を繰り返し、実践的な調理人に育てるのだそうです。素晴らしいトレーニングですね。商工会議所に所属する校長先生は、この学校は調理技術だけでなく、その他、色々な職人の技術を教えていると説明してくれました。この職人の技術訓練をきちんと行うことが、フランスの手工芸品のレベルを高く維持している源なのだと認識をさせられました。
(以上) |