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活動内容の報告<2012年度> 最適厨房研究会「欧州厨房調査団」報告

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病院「LANDESKRANKENHAUS FELDKIRCH」視察 10月22日

ミュンヘンからバスにて、オーストリアのフェルトキルヒまで3時間かけて移動した。車窓からは太陽光パネルの畑がたくさん見られた。太陽光発電が進んでいる国だと改めて実感した。

【病院概要】3年前に竣工した大学病院。23部門1600人が働いている。600床。厨房はオール電化(電磁プレート調理器、ブレージングパン)だった。シーメンスがエネルギーマネジメントシステムを導入しており、建物全体としても環境に配慮した設計になっていた。洗浄室が120m3、加熱室は220m3。省エネに積極的に取り組んでいる病院とのこと。昼食だけで1500食提供している。現状地域の幼稚園の食事も提供しており、今後は周囲の学校などへの施設へも提供する予定で、4000食提供する予定。昼は暖かい食事だが、夜はサンドイッチなど冷たい物が多い。

この地方で最もモダンな建築物と言われている。それぞれの病院棟をガラスの通路部が結ぶ構成となっている。病院棟の直線とガラスの曲線が調和されていて、周囲の自然と調和した美しい建築物だった。

【左】病院全体外観 【中】厨房外観 【右】病院平面図
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最近オーストリアにおいて子供の食中毒の問題が発生したため、特に衛生面への監視が厳しくなり、今回の視察においても厨房の内部へ入ることはできなかった。

厨房には天井に自然採光を取り入れる窓があり、厨房周囲の窓面には太陽の角度により自然に角度を調整して太陽光を厨房内に積極的に取り入れるルーバーが設置されている。さらに厨房内には柱がなく、仕切りはすべてガラスになっているため、厨房全体が明るく光環境にも配慮した快適な空間だった。ヨーロッパでは30パーセントの窓をつけることになっている。また、仕切りがガラスなので、シェフが厨房中全体の環境を一目で確認できるようになっている。シェフの権限が強く、調理だけではなくて、厨房の設備や環境にもシェフの考えが反映された空間になっている。

野菜など食材はすべて加工されたものが搬入され、料理のサンプルはすべてシェフがチェックし、写真を残している。加工された食材はワゴン(ホット、コールド)が自動運転で動きエレベーターを使用して配送している。ワゴンは、人が前にいるときなどは「どいてください」など、音声機能も搭載しているとのことだった。

【左】手前が油を使う加熱エリア(天井には昼光採光窓・換気天井システム・ガラスの仕切り)
【右】手前が油を使わない加熱エリア
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加熱機器はすべて壁釣り型で、清掃員が厨房機器の下も洗いやすい設備になっている。ヨーロッパでは仕事の範囲が別れており、調理者と清掃者の役割が分担されている。調理者は厨房の清掃は一切せず、調理終了後に清掃の専門家が来て、掃除を行う。ヨーロッパでは日本とは調理スタイルがまったく異なり、電磁プレートが二台とブレージングパンでほとんど料理できてしまう。作業の流れが一方通行になっていて、食材が逆戻りしないようになっており、衛生的に配慮されている。食材が搬出される箇所も、ホットとコールドで別れている。(鈴木氏談)

加熱室中央はガラスで区切られており、油を使うゾーンと油を使わないゾーンでゾーニングを行っている。油調理を行うゾーンと油を使用しないゾーンでは、厨房全体や換気設備の汚れ方も違うので、設備の仕様は異なり、掃除の方法や頻度も異なる。

厨房には換気天井システム(HALTON)が導入されており、グリスフィルターは内蔵型のため見えなくすっきりしている。1年位に1回洗浄しており、8ヵ月前に洗浄したとのことだった。

室内の音環境にも配慮しており、給気音を抑えるため吸音材が入っている。また 結露を防止するため、置換換気の給気の温度と室内温度との差は6度以内と規定されている。日本では30℃以上の室内に16℃の給気がされるケースも良く見られるが、ヨーロッパでは給気方法や給気方法までしっかりとコントロールされており、快適で衛生的な厨房環境だった。

洗浄室では、洗浄器上部に取り付けられている2つの排気筒から3000m3/hづつ、6000m3/hの排気風量で排気しており、天井換気システムで3000m3/hの排気を行っていた。

【左】洗浄室(洗浄器上部には筒状のフード、天井換気、窓にはルーバー)
【右】シェフにヒアリングする様子
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換気天井は視野が広くて快適で、病気になりにくく、厨房で働いている人が辞めにくいと言われている。実際に本厨房におけるアンケート結果でも満足度がとても高い。厨房の施工費は、倉庫やワゴンなどもいれて大体2300万ユーロ程度。厨房設備で1200万ユーロ(シェフの記憶の範囲なので確かではないとのこと)。また、今回の厨房でどの程度省エネかなったかは、病院以外の食材も提供していることもあり、定量的には一概に比較できないとのことだった。(シェフ談)

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